野の窯だより 10月 |
知人から到来した沢山のusedの着物。その中に沖縄の織の着物があった。眺めれば眺める程に味わい深く嬉しくなる。寸法も直して着ようとよくよく隅々を見ると、相当に擦り切れている。元の持主にもとても愛された着物であることが判る。惜しいけれど、では座布団にしましょう、とベランダの椅子でほどきはじめた。秋晴れの穏やかな陽だまりの中。 最近、着物を仕立ててもらうと、手縫いかミシン縫いか選択させられる。更に手縫いでも外国に発注するか、国内で縫うかで価格が違う。 − これは断じて日本の手仕事、ほどきながら確信する。荒くざくざく縫いつける部分、1ミリにも満たない針目の部分、その自在さ。本当に美しいとしか云いようのない玉結び。こんな丁寧な手仕事が、ごく最近まで、普通の家庭の女性の仕事の一つとしてどの家にも存在していた。それは衣のみならず、食住に至っても同じ。平均寿命も今よりずっと短い生涯をこのように丁寧に暮らすことに大部分の時間を費やして生きていたのだなあと唐突に思う。私にはそれが、美しくつつましい豊かな命に思えた。 − 透き通った秋の陽だまりの中で。 |
割山椒。珍味を入れて、燗酒のお供に。 |
アキノウナギツカミ |
シラヤマギク |
セイタカトウヒレン |
大雪渓はクレバスでズタズタ |
後方が白馬山荘、その後ろが山頂 |
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