野の窯だより 11月


   
   家の前でモミ殻を灰にする               ハンデ掛けされた稲の束               ホタルと散歩
 

 10月、近くの農家ではそろそろ稲刈りが始まった。
          
 この辺りでは、刈り取った稲をハンデ(どんな字を当てるのだろう?)掛けにして、のどかに天日干しです。青く澄んだ空の下で、刈り取り、ハ

ンデ掛けに励む農家の方から、モミ殻をもらう話をつける。農家にとって今では使い道がなく、捨て場に困る籾殻も私にとっては大切な釉薬の

原料となるのです。1日の朝早く、ゆうさんがやってきて、モミ殻の燃やし方を講釈、実演していきました。焚き火の上に煙突を立て、周囲にモミ

殻を寄せ、火がモミ殻に点いたところで「これで大丈夫」と再び稲刈りに田んぼに帰ってゆきました。あとはただ灰になるのを待つのみ。夕方に

はよいモミ灰ができました。あとはこれをモチつきのように臼で粉末状になるまでついて、ようやく釉原料のモミ灰の完成です。

 13日〜15日の未明にかけて素焼き。

 今回はモミ灰を使った糠白釉、藁灰を使った黒釉、寺山を合わせた並白釉を中心に釉をつくりました。テストピースを作りテスト。なかなか満

足がゆかず苦しむ。

 そうしてやっと釉掛け、窯詰めが終わったのは月末。

 今日、11月1日朝、ここ山麓に初霜が降り、初氷が張りました。窯に火を入れる4日までのひとまず肩の荷を降ろせるひととき、ホタルの朝の

散歩につき合う。

 気付けば家の周囲は紅葉がはじまり、秋が明るく深まってゆくよう。ニシキギ、ガマズミの赤い実。ウワミズザクラ、ツリバナ、カエデの紅葉。

コナラ、クヌギ、桑の黄葉。鋭いモズの鳴き声。

 冷たい朝の空気。抜けるような青く乾いた晩秋の空に浅間山の煙がくっきりと一直線に南にのびています。

 私の仕事も、この生まれたての朝の空気のようにいつも新しくありたい、そう思います。


    
    登り窯にこもって窯詰め                          青空にくっきりと浅間山の噴煙がのびている




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